2016.02.29

Tさんのこと

 Tさん、と書いたけど、
普段は、T、と呼び捨てで呼ぶ仲である。

彼女とは、27年前、会社の同期として知り合った。

何十人もいた女子新入社員の中で
彼女は一際、目立つ存在だった。

どれだけ人数がいたとしても、
リーダーとなる人だった。

容姿端麗、頭脳明晰、
さらに機敏だった。

入社当時の私は、
周りの優秀さに圧倒されて、全く自信を失っていたので
とりわけ目立った存在の、そんな彼女に近づくことは
恐れ多いことだった。

私なんて、ダメ。
きっと、バカにされてしまう。

そう思って、自分から壁を作っていた。

いつも遠目で、尊敬と羨望とちょっぴりヒガミの気持ちを持って、
彼女を眺めていた。

彼女は、いつも、人々の間を、しなやかに立ち回っていて、
新入社員とは思えない風格をすぐに備えて行った。


それでも、
私なりに、会社生活を楽しんでいった。

そんな中にも、何とか自分とテンポが合う人は
見つけられた。

会社は広い。

同期だけではない。

先輩、後輩、上司・・・。

幸い、良好な人間関係を築くことが出来た。

夢中で時を過ごしていた。

ぶつかったり、転んだりはあったけど、
いつも、一人ではなかった。


そんな風に過ごしているうち、
同期がどんどん減っていった。

結婚、とか、留学とか、あるいは転職とか、
意外に早く、職場を去る人が多かった。

容姿端麗で学歴が高いことが、
必ずしも会社で活躍出来ることに繋がらないことを、
この時に知った。

同期会で集まるメンバーが、
少なくなっていった。

一方私はその頃には、仕事にも慣れて、
自分に少し、自信が持てるようになっていた。

優秀でかつ美しい人を前にしても、
自分は自分、として、ふるまえるようになっていた。

一方、Tは、
当初の、少し潤いに欠けるくらいの才気煥発さが
あれっ、と思うほど、抜けていった。

良い意味で、力が抜けて、
なんだか、ゆったりしたように感じた。

近づいても、前のような、ドキドキするような威圧感がなくて、
もともとあった中身の充実に、優しさが良い按配にミックスされて
さらに素敵な女性に生まれ変わっていた。

仕事の苦労とか、恋愛とか、いろんな経験を経た結果なのかなぁ、と思った。

お互いが少しずつ変わったことで、
ぐっと、親しくなった。



それでもその後、お互い結婚して、
しばらくは、年賀状やフェイスブック以外では、
疎遠になっていた。

そんな中、
昨日、久しぶりに電話で話した。

何から話していいかわからないほど、気持ちがあふれてきたけれど、
それは、今度久しぶりに集まる同期会まで取っておくことにした。

楽しみにしてるね、と電話を切ってから、
27年前の、出会いの日のことを思い起こしていた。

あの時。

なんて素敵な人だろう、
それに比べて、私はなんてダメなんだろう、私には何もない、と
ただ情けなく、悲しかった。

考えたら気持ちが暗くなった。

暗くならないためには、彼女に近づかないことだ、と
思っていた。

それが、たくさん同期がいる中でも
こうして、自らTと連絡を取り合い、
親しく話せる日が来るなんて。

不思議だなぁ、と思う。

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