2016.03.01

夢と現実

 私が中、高校生の頃、りぼんで大人気だった陸奥A子の作品集が
昨年末から、本屋に並び始めていて、
たまらなくなって、つい全部買ってしまった。

ずっと大切に持っている、マスコットコミックスは
心底、宝物だけれど、
字の小ささが、最近急激に進んでいる老眼には辛くなってきた。

それに比べて、今回の全集は、漫画としてはかなり大判なので
比較的読みやすい。

今、それを、ホットカーペットに座って、ソファーにもたれ、
膝に毛布をかけて読むのが、何よりの幸せタイムである。

読んでいて、今だにとても楽しいのだけれど、
昔と違うのは、私の心がずいぶんうす汚れてしまっているところである。

昔は、ページの上で繰り広げられるラブストーリーに、
自分の未来を託しながら読んでいた。

それに比べて、今は、
自分の心の奥底に重く沈んでいる過去を
脳裏に浮かべつつ、読んでいる。

陸奥A子の漫画と言えば、背が高く、メガネをかけたアイビールックの男の子が象徴的なのだけど、
ファンなら誰もがそうであるように、
私も、こういう男の子がいいなぁ、と思っていた。

そうして、漫画を読んでいた頃から遅れること10年、
まさに、そのタイプの男性が目の前に現れたのだった。

背が高く、色白で、笑うとメガネの奥の目が優しくて、
当りがソフトで、丁寧で、それでいて気どっていなくて、
ファッションも、陸奥の漫画に出てくる男の子みたいな感じだった。

そんな男性と、ある日突然出会い、突然デートに誘われたのだった。

陸奥の漫画の信奉者として、
ようやくこの時が来た、と私の心は高鳴った。

ページの上に描かれた世界が
ようやく自分のもとへ訪れた、と信じて疑わなかった。

恋する乙女だった。

私の心は、簡単だった。

すぐに夢中になって、運命の出会いだ、と決め込んだ。


しかし、その夢がもろく崩れるまで、たいした時間はかからなかった。

陸奥A子の漫画風のその男性は、
ちっとも陸奥A子の漫画の男性ではなかった。

私に近づいてきたのは、ただの遊びだった。

それは悲しいことで、認めたくないことだったけど、
事実だった。

少女漫画とは、紙の上だけのものだったのだ。

今、そんな事を思い浮かべながら、
陸奥A子の作品集を手にする私である。

今となれば、稚拙なストーリーである。

でも、それが、少女漫画なのだ。

それを知っている私は、
紛れもなく、大人なのである。


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